ThinkPad X200/200s を最大限に使い倒す



・はじめに
プロのための仕事道具というイメージの強いThinkPad
乱雑な・無造作な扱いにも耐える堅牢性から、むしろ大事に使うというより
ハードに使う方が似合っているイメージがある。
同じ感想を持たれる方もいるだろう。


しかし、そこを筆者はあえて[丁寧・大事に使いたい]という視点から
購入から日々のメンテ・さらにはアップグレードの面まで
購入時の品質・外観をいかに保ちながら、使い勝手のいいモデルに仕立てて
いくか、筆者が持っているThinkPad X200sを材料とし、
自分の考え・経験をここに記すことにしたい。
特にこれからThinkPad、特にXシリーズを買われる方に、少しでも参考となれば幸いである。


なお、筆者なりの愛情表現ではあるが
やや愛情を傾けすぎたか長文にも程がある出来映えとなった。
その辺は生暖かく見守って頂くかご容赦頂きたい。

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・基礎編
大事に使うのなら消耗品・オプションの準備は欠かせない。
筆者はマシン購入前・購入後に以下を準備した。


[ケース]
X200sのようなモバイルPCを持ち運ぶ・保護する面ではケースの存在が欠かせない。
鞄にそのまま放り込むというのがThinkPad保守本流といえるが、過保護主義の筆者には
恐れ多くて無理だった。



デザインを重視するか、機能性で選ぶか選択肢はあると思うが
筆者はBuiltの12-13インチ向けケースを選んだ。
ダイビングスーツにも使われる素材・ネオブレーンを採用した
ケースというよりはゴムっぽいジャケットと言えなくもない。
これは手で持つ部分がカーブしており、ただの四角よりホールドしやすくなっている
という特徴がある。
そこら辺の事務的なデザインをしたケースよりは見栄えもするだろう。
カラーバリエーションも複数あり、無地の黒というド定番から
マルチカラーのドット柄という派手目の物までそろっている。
デザイン重視なら筆者はこれをお勧めする。
強いて難を言えば、X200s+9セルバッテリのように、後ろにバッテリが張り出す場合
カーブの部分がバッテリで出っ張るところだろう。


機能も重視するなら、有名な松下ラゲッジ製が良いだろうが
筆者は持っていないのでここでは言及しない。


[クリーニングクロス]



主にホコリ払いのために使用するが、マシンを閉じる際キーボードの上に置くことで
ThinkPadに見られる[液晶にトラックポイントの痕が付く]症状を防ぐ事が可能だ。
液晶に痕が付くのが耐えられない向きには必需品である。
しかもキーボードの汚れ・テカり対策にも使える。
また、本体全体を覆ってしまうという手もある。何もそこまでという感じだが
保護主義者にはやり過ぎという言葉は存在しないので無問題。
なのでキーボード用・本体用と2枚用意したい。


クリーニングクロスは色々種類があるが、柔らかく手触りがよいという面で
筆者はコクヨの製品をお勧めする。超極細の繊維(ベリーマX)を使っているおかげか、
手触りに引っかかりがなくしなやかなので、本体に傷を付けたりということはまずない。
キーボードの上にはSサイズを半分にたたんで乗せるような感じとなるが
大きさ的にはちょうどいいと思う。
また本体用には、同じ素材だがバッファローから出ている液晶テレビ用の
大きいサイズ(400mm×500mm)の物がちょうどよいだろう。


[ACアダプタ]
もはや定番。家用・会社用・外出用など。
ThinkPad用のACアダプタは純正でも安いので純正を買うべきだろう。
65Wでも90WでもOKだが、外出用には65W、据え置きなら90Wがおすすめ。


大きさ以外にも意外な違いがある。何かというと、
・65W…バッテリを外しているとフルパワーで動かない。
・90W…バッテリを外しててもフルパワーOK


[トラックポイント]



ThinkPadといえばトラックポイントである。黒い筐体に紅一点のアイツ。
毎日使っていれば劣化してくる。
クラシック・ドーム、ソフト・ドーム、ソフトリムと3種類あるが
どれにせよ予備は用意しておきたい。


よく売られているのは3種類、2個ずつ入った[トラックポイント・キャップ/コレクション]
(P/N:73P2698)だ。純正品で物は確かだが、1種類しか使わない人にとってはもったいない。
前は1種類だけ10個ほど入ったラインナップもあったが、いつの間にか無くなってしまった。
(筆者は運良くソフトドームの物を確保できている)
なぜ1種類だけのものが無くなったのか分からないが、ぜひレノボには再販して頂きたいと思っている。


ただ現在では、オークションで1種類だけ販売されているのをよく見かける。
純正品と同じかどうかはまちまちだろうが、現時点では恐らく一番賢い購入方法といえよう。


[キーボード]
ThinkPadと言えばキーボード、のはずである。
毎日打鍵していればいつかはヘタってくるのも必然である。
そのため予備として準備しておくということも考えられる。
部品センターで購入することもできるが、予備として購入するのなら
部品センターではなくオークションなどで入手しておきたい。


なお保守マニュアルを見ると分かるが、1つの言語につき2つのFRU番号が設定されている。
これは製造メーカーの違いであり、実際何が違うのか、こういった所に着目するのも面白いだろう。

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・応用編
購入時の構成でも十分満足いくスペックのX200/200sだが、どうせなら
より"スキのないのモバイルPC"を目指したい。
そのためのプランをここでは紹介する。


[メモリ]
X200/sはDDR3 SO-DIMM(1066MHz)のメモリを搭載している。
公式のスペック表では最大メモリは4GBとなっているが
X200/sの搭載するGM45/GS45チップセットの仕様上では8GBまで搭載可能であり、
また実際にも8GBまで認識し、動作が可能であった。
懐に余裕があるなら、ここは使い道を考える前に黙って4GB×2を購入したい。


さて、LenovoのWebストアでも4GBのメモリは購入可能だが
筆者のお薦めとしてはサンマックスのDDR3-1066-4GB 2枚セットを挙げておく。
一時期急激に値下がりし、今では2枚で3万円半ばという相場まで落ちた。
PhotoShopのようなメモリを大量に食う用途で使うなら、間違いなく必須といえよう。


[ストレージ]



モバイル用途で考えるなら、HDDよりはSSDであることに異論はないだろう。
低消費電力・耐衝撃・パフォーマンスの面で今やSSDは立派な選択肢となった。
どうしても大容量を求めるといった希望がないならSSDをお勧めしたい。


SSDといっても選択肢が増えすぎた感があるが
やはり鉄板を選ぶならIntel東芝あたりが定番だろうか。
Intelは2度もファームウェアバグを起こした前科があるので、選択肢から外す方もいるだろうが
やはり現行でも最速クラスのランダムリード・ライトは魅力的。MLCのX-25Mは値段が安く、
タマ数も安定してきた。
また、東芝ならライトもかなり速い。どちらを選ぶかは好みのレベルだろう。

そして、最近出てきたSandForce製コントローラー搭載のSSDも注目の一品だ。


[ワイヤレスネットワーク]
データ通信端末の多様化が進み、今やどこでもネット出来るのは当たり前になった。
しかしイーモバイルをはじめとした外付けデータ通信端末では、出っ張り・忘れる・
感度が内蔵より劣るというつまらない点があることは否定できない。
せっかくThinkPadには高感度なアンテナ(UltraConnect)があるんだから、
なるだけこれを最大限に活用したい。いやすべきである(断言)。
そうなるとスマートな内蔵以外の選択肢ありえないのだ。
ここでは通信方式ごとに特徴・導入手段を紹介していく。


なおこの項だけは、日本の電波法・技術基準適合証明(以下技適)に関連する内容になるので
場合によっては電波法等に触れるリスクがあると言うことをご理解頂きたい。


[WiMAX]



ThinkPad X200ではカスタマイズでWiMAXカードが選択できるが、200sでは何故か選択できない。
WXGAでもWXGA+でも、アンテナの数自体は問題ないはずだ。X200sだけ選べない理由がよくわからない。
しかし、もちろんX200sでもWiMAXカードは動作可能だし
エリア外にお住まいでもない限りはWiMAXを内蔵することをおすすめする。
速度・料金プランからみて魅力的な通信手段であることは間違いなく、
また「窓際でなきゃ繋がらない」というのは、サービスイン当時のイメージであり
実際はUltraConnectを利用すればある程度室内でも接続が出来る場合が多い。
もちろん無理なケースもまだまだあるが。


選択すべきカードだが、技適をきちんと取得していてかつ
ThinkPad X200/sで確実に使えるのは
FRU:60Y3197(Intel WiMAX/WiFi Link 5150)のみである。
T400sに搭載されているハーフサイズのものは、筆者も扱ったことがないため不明とする。


入手手段はやはりオークションが中心となる。
タマ数が少ないのが難だが、手に入ってしまえば単純にWiFiカードと入れ替え、
ドライバをインストールするだけ。
15日間のお試しサービスを活用し、実際に使えるとわかったなら契約すればよいし
ダメでもWiFiカードとして普通に使える。
モバイルPCとして、[何処でもネット]を実現するためには外せない。


[ワイヤレスWAN]



いくらWiMAXが優れていても、サービスエリアの面ではまだまだ発展途上もいいところである。
そうなるとワイヤレスWAN(以下WWAN)の優位性はまだまだ高いだろう。
ThinkPad X200/sはもともとWWANが搭載できるようになっており、
どちらにもWWANカード用のスロットと、
バッテリの装着部分にSIMカードスロットが存在する。


以前、X200はカスタマイズでKDDIのモジュールが選択できたが
高価だからか、不人気だったからか今では選択できなくなってしまった。
しかし、海外では3GのワイヤレスWANカードがカスタマイズで選択でき、
日本向けにも、技適を取得している FRU:43Y6513というカードがある。
もともと法人向けのラインナップとして選択可能だったようだ。
これはエリクソンの[F3507g]というモジュールを使ったもので
3Gでのデータ通信・GPSに対応している。
SIMカードはドコモ・ソフトバンクの物が使用可能で(使えない物もある)、
Access Connection経由でAPNの設定・接続も可能だし
[ThinkVantage GPS]というユーティリティを使えば、GPSで現在位置も確認できる。


ただし、ネックは価格。オークションでも1万円以上と高値安定である。
また、手に入れたとしても本体にアンテナが内蔵されていない場合は
アンテナもパーツセンターなどで入手してくる必要がある。
見分け方だが、キーボード・ベゼルを外して無線LANカードの上にアンテナが
テープで留められていればアンテナが内蔵済だ。
なかったとしても、X200X200sのWXGAモデルであれば、WWAN用のアンテナをそのまま内蔵する余地はあるが
X200sWXGA+モデルはかなりの無茶をしないといけないため、あまりお勧めはできない。
どうしてもWXGA+モデルでWWANアンテナを内蔵したい方は、筆者のブログを参照頂きたいが
何があっても自己責任でお願いしたい。


WWAN+WiMAXと揃えば、X200/sのモバイルPCとしての価値が相当高まるのは間違いのないところだ。
次期モデルの話も聞こえてくるが、レノボにはどうか次期Xシリーズではきちんと
WWAN/WiMAXが選択できるようにお願いしたい。
選択できるならわざわざこんな綱渡りな記事を書く必要がなくなる。

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長々と書いてきたが、こんな記事を書きたくなるのも
ThinkPad X200sという魅力的なモバイルPCに出会ったからに他ならない。
これからもレノボには素晴らしいモデルを世に出し続けてもらえるように願い、筆を置くものとする。